• ネットショップを開設するならBASE
  • shopping cart

2019/12/13 18:23



かわいらしい掛川城を見上げながら二の丸美術館へ。



木下満男氏はコレクションの寄贈のみならず美術館建設にも大きく寄与した掛川市の文化振興の立役者です。


江戸末期から明治にかけて細密で美しいたばこ道具が生まれた背景には廃刀令によって職を失った刀装金工師達の存在があります。


その名工の仕事に魅了され、刀装具、装身具、そして喫煙具を氏がこよなく愛したのも、一目みれば痛いほど納得できます。


前金具が鶯、裏座を見ると梅で「春」の叺(かます)。


「臼」を舞台にした、猿蟹合戦のとんこつ一つ提げたばこ入れ。


象牙を竹そっくりに細工し、竹の象眼を施したきせる筒。


蜘蛛の巣の上で獲物を狙う蜘蛛の根付けの留め具が蠅という、叺の形のとんこつ。


肩肘張らない「見立ての文化」の、このぬかりなき調和にほれぼれしました。



■ たばこでべんきょう_たばこ入れの構成 ■


せっかくなので「きせるとたばこ入れ」報告。

秋に「刀装具と喫煙具」を展示するみたいなので復習も兼ねて。


【叺(かます)】たばこ入れの袋のこと。どうして叺(かます)って言うんだろ?


【前金具(まえかなぐ)】蓋と袋部分を留める為の金具。廃刀令によって中断された「目貫(めぬき)」が転用され飾り金具として名工の優作が蘇る。なるほど。


【きせる筒】きせるを収納する入れ物。ほぼ「鞘」感覚。きせるが「刀」で叺は「印籠」だ。


【根付け(ねつけ)】袋物を腰に提げるための道具。帯の間に通して根付けを上に出して留める。象牙や鹿角を細工する「牙彫師(きばほりし)」もこの根付けで腕を奮ったはず。


【鎖・紐(くさり・ひも)】根付け、きせる筒と叺を繋ぐ物で、革なども用いる。すべてが錺師(かざりし)の手作り。・・・これぜんぶ?!


【緒締(おじめ)】鎖や紐を締めたり、長さを調節する為に使う、穴開きの玉や金具。



■ たばこでべんきょう_叺(かます)の素材 ■


・・・字ぃだけで申し訳ございません。


「きせるとたばこ入れ(二の丸美術館)」用語解説録を元にひとり言をやや投入。


【金唐革(きんからかわ)】鞣した革に金属箔を貼り、金型で様々な文様を型押し、彩色して仕上げる17世紀初頭の南蛮渡来な文様エンボスレザー。異 国情緒溢れる文様と色彩が当時の日本で珍重された高級素材。この革で作れば他も凝たりたくなって贅を尽くしたくなるのも当然かもしれません。


【菖蒲革(しょうぶがわ)】鹿の鞣し革に、藍地に白く菖蒲や馬、爪などの模様を染め出し革。この菖蒲革の名前は「勝武」や「勝負」とかけて、武士の鎧、武具などに好んで使用された。タンナーもマーケティングで勝負してます(笑)


【更紗(さらさ)】南蛮貿易で渡来した木綿布。主にインドやジャワ、シャムから伝来。やっと馴染みのある名前が出て来ました。


【棧留革(さんとめがわ)】インドのコロマンデル地方の異称「セント・トーマス」から伝えられたことから、この名前・・・せんととますがわ→せんとまがわ→さんとめがわ、、、な、なるほど。皺目のある鞣し革で上漆によって「黒棧留革」「赤棧留革」となります。


【蒲団革(ふとんがわ)】牛革を鞣して上漆をかけたもので、本来は座布団などに使用されていた革。へーっ!だからこの名前なんだ!!丈夫で柔らかい上質革。


【正平革(しょうへいかわ)】鎌倉末期以降に流行った文様革で、獅子と牡丹をアレンジした“藻獅子(もじし)”という図柄に“正平六年六月一日”の 日付を入れた革。???・・・この想像し辛さにアバンギャルドなデザインの手応えを感じます。主に武将の鎧や武具に使用。そりゃそうでしょうとも。


【唐棧(とうざん)】江戸時代に輸入された木綿の縞織物。赤・黄・紺・白の細縦縞で通人に好まれた。なるほど、粋です。棧留革と同じく、セント・トーマスから伝来された為この名前。やっぱり(笑)


【羅紗(らしゃ)】紡毛織物を縮絨(しゅくじゅう)して作った厚手の毛織物。厚地の紡毛織物の総称。縮絨=フェルト化です。雛壇の赤い「毛氈(もうせん)」もそうです。ポルトガル語が語源。ラシャ鋏(布用裁ちハサミ)なんて言うくらいの布の代名詞的存在。


【天鵞絨(ビロード)】「てんがじゅう」とも「ベルベット」とも呼ばれる。パイル織物の一種。柔らかで上品な手触りと深い光沢感がチャームポイン ト。絹で織ったものを「本天」綿で織ると「別珍」。「コール天」は「コール・デュ・ロワ(仏語で“王様のお仕着せ”の意)」と「天鵞絨」のポートマントー (かばん語=混成語)。縦畝(たてうね)のある綿ビロード=コーデュロイです。


【伍呂服連(ごろふくれん)】舶来の梳毛(そもう)織物。主に羊毛その他の粗剛な獣毛で織ったものを示す。染色により「藍伍呂服連」「縞伍呂服連」などと称する。江戸では「ゴロ」上方では「フクリン」と並び称された。フクリンの方がかわいくて好き。


【縫潰し(ぬいつぶし)】刺繍技法の一種。一粒一粒玉縫いを施して、布面全面を刺繍で文様にしていく緻密で繊細な手間のかかる技法。下地を覆う「縫 潰し」に対して、生地を残すまばらな玉縫いを「相良縫い(さがらぬい)」と呼び、フランス刺繍ではフレンチナッツステッチと言うそうです。名前が変わるだ けで想像する華やかさの質も変わってきます。



■ たばこでべんきょう_技法 ■


【打ち出し彫り(うちだしぼり)】金属の板を鏨(たがね)で叩いて形を出し、表に返して鏨で形を整えて文様を出す金工技法。


【片切り彫り(かたぎりぼり)】金工で、一方を深く直線に、一方を浅く斜めに彫る彫金技法。筆で描いた日本画のような筆勢がある。加納夏雄は、この片切り彫りの名工であった。

※ 加納夏雄:文政11年(1828)生まれの彫金師。天保11年、池田考寿の門に入り、幼き頃より彫金を習う。絵画や漢学にも長け、嘉永年間に「夏雄」と改 名。片切り彫りは夏雄の得意技法であった。宮内省顧問、東京美術学校教授、帝室技芸員、68歳で従六位に任ぜられ、明治彫金界の最高峰となった。明治31 年(1898)71歳で没する。


【容彫り(かたちぼり)】打ち出し彫りの別称。主に刀剣具の目貫について呼ばれる。


【丸彫り(まるぼり)】金属・牙木・鉱物などの個体を、鏨(たがね)あるいは刃物で削り出して形を出す彫金技法。


【魚々子(ななこ)】彫金技法のひとつ。金属面に鏨(たがね)で、栗粒を並べたように細粒を凸起させたもの。刀装具の鍔(つば)や小柄(こづか)によく見られる技法。


【鍍金(ときん)】水銀に金や銀を溶かして金属に塗布し、のちに熱を加えて水銀を蒸発させ金を定着させる方法。俗にいう金メッキ。


【色絵(いろえ)】彫金技法のひとつ。文様部分に、金・銀・四分一(しぶいち)・赤銅(しゃくどう)・素銅(すあか)など金属の薄板を鑞付け(ろうづけ)して、色彩変化を付ける技法。金属によって彩色画のような華やかな彩りになる。


【螺鈿(らでん)】夜行貝や鮑貝の殻を適度な暑さにし、模様に切って漆面や木地にはめ込む漆芸技法。木地を彫り込んではめ込む象眼方法と、漆面に貼り付ける貼付方法とがある。


【芝山細工(しばやまざいく)】螺鈿の一技法で、厚い貝に模様をより立体的に彫り表す方法。貝だけでなく、珊瑚、象牙、瑠璃なども彫り込まれた美しい光沢と立体感が特徴の細密技法である。江戸・明治期にたいへん人気を博した。


【堆朱(ついしゅ)】漆を何層にも塗り重ねて、これに文様を彫り表す彫漆技法。本来は中国から伝来した技法で、日本でさらに多様化した。漆色により、堆朱・堆黒・堆黄などと称する。


【網代編み(あじろあみ)】竹・藤・檜などを薄く削り、縦・横・斜めに編む編み方。編み込む材質より、粗目編みや細目編み、また変わり編みなど多様にアレンジできる。たばこ入れでは、夏物のきせる筒に利用される。


【花結び編み(はなむすびあみ)】藤の編み方の一種。小さな小花を一面敷き詰めたような編み地になることからこの名がある。たいへん手間の掛かる凝った編み方である。


【一楽編み(いちらくあみ)】藤の編み方の一種。漢字の「一」を配列良くぎっしりと詰めたような編み地である。和泉の土屋一楽が考案した編み方なので、この名がある。



■ たばこでべんきょう_根付・緒締・煙管筒に関する素材 ■



【四分一(しぶいち)】銀と銅の合金で、朧銀(おぼろぎん)とも呼ばれる。銅:3・銀:1を配合(四分の一が銀)するところから「四分一」となったと言われる。暗灰色で艶があり、材質は柔らかい。


【赤銅(しゃくどう)】烏金(うきん)・黒留(くろとめ)とも呼ばれる。金・銀・銅の合金。銅100に対し、金2〜8、銀1を加えたもの。わずかに茶を帯びた深みのある黒色。


【素銅(すあか)】銅鉱の乾式精錬によって造られる少量の不純物を含む銅。艶のある赤茶色で、色絵技法などによく使われる。


【象牙(ぞうげ)】象の牙。淡黄白色で放射状の地紋がある。江戸時代に輸入され、装身具や細工物に利用されたが、現在ではワシントン条約で輸入が規制されている。


【鹿角(かづの)】鹿の角。独特の黒ずみがあり、年月を経るごとに渋い風合いとなる。根付けや煙管筒などの細工物に利用した。


【ウニコール】北氷洋に生息する海獣「一角(いっかく)」の角。淡黄白色で飴色の艶を持つ。根付や細工物の材料として使われるほか、古来より漢方薬の解熱剤として利用されている。


【瑪瑙(めのう)】石英(せきえい、quartz、クォーツ)・玉髄(ぎょくずい、chalcedony、カルセドニー)・蛋白石(たんぱくせき、 opal、オパール)の混合物=(碼碯、agate 、アゲート。主に赤褐色、白色の縞筋文様で、美しい光沢がある。たばこ入れでは緒締に多く見られる。石英は「火打ち石」としてタバコ文化と絡んでいます。


【翡翠(ひすい)】硬玉(ヒスイ輝石)の一種。鮮やかな美しい緑色を有し、緻密で光沢感がある。主に装身具や装飾品として用いられる。見た目が似て いて区別が付きにくい「軟玉(ネフライト : 透閃石-緑閃石系角閃石)」も全く別の鉱物だけどこちらも翡翠と呼ばれるみたいです。ネフライトに同情。


【水晶(すいしょう)】無色透明の結晶石英。たいへん硬質な材で、印材、光学器機などに用いられる。微量の不純物を混ずるものに、黒水晶、紫水晶、銀水晶、泡水晶、綿水晶などがある。・・・この銀水晶はセーラームーンの幻の銀水晶とは違うんだろーか?


【トンボ玉】ガラス製の丸玉の一種。様々な色ガラスで文様を吹き上げ彩色するもので、装身具として用いられる。トンボの複眼に似ていることからこのネーミング。


【黄楊(つげ)】暖かい山地に自生する常緑小喬木。黄色で固く、櫛や印材・将棋の駒・根付などに使われる。たばこ入れでは煙管筒によく利用されている。


【鏡蓋(かがみふた)】根付けの形体のひとつ。象牙や木で皿形の受けを作り、そこに金属を蓋にしてはめ込む。主に金属部に装飾がほどこされる。


【火はたき】根付の形体のひとつ。本来はきせるで吸った煙草の火玉を落とし、吸い殻を受けたり火種を入れるものだが、彫刻彫金細工が成された装飾性を重視した火はたき根付も多く見られる。


会場に展示してあった中ですんごくカッコ良い延煙管があったんですが、もしかしたらそれが「木目金(もくめきん)」というヤツなのかもしれないと思 いました。「木目金(杢目金)」とは、銀や銅、金、赤銅、四分一などの合金を何層にも重ね、炉でとも付けした塊を鏨(たがね)で模様を出し、延べ鎚で延ば す行程を繰り返し、独特の木目模様を表現する技法で、刀の鍔などに用いられたのが始まりと言われています。だからと言って、あの煙管をどーやって作ったの か想像すらできないのは今でも変わりませんが(笑)



2011年05月20日・21日・23日、06月07日・13日


-----------------------------------------------------------------


日付を見るとそれぞれ書くのに中一日を要したのだというのが垣間見えたのでまとめてみました。

あんなに読んで調べて時間をかけて、そういう時はそらで説明できたのに

時間がちょっと経つとすぐ上書きされる記憶の容量のなさが我ながら惜しまれます。